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14 Oct Wの悲劇 薬師丸ひろ子が女優開眼したと言われる秀作
原作はミステリー作家夏樹静子の小説「Wの悲劇」からだが、それは舞台劇にし、似たような悲劇をそれを演じる劇団の人間模様として描く脚本がまず鋭い。
例えば俳優座とか文学座のような大きな劇団の研究生が薬師丸ひろ子。Wの悲劇の舞台劇のオーディションを受けるが、ヒロインに選ばれたのは、同じ研究生の高木美保。薬師丸はお手伝いさんの役。劇団で君臨する大スターが三田佳子。Wの悲劇の大阪公演中、三田佳子の大パトロンが腹上死する(セリフもなく死体としてだけ出演したのが渋い演技派の仲谷昇で、驚きました)。スキャンダルを恐れた三田は、ヒロインをやらせる交換で、薬師丸のパトロンとして事件を公にする。
高木は三田によって役を降ろされ、薬師丸は約束通り役を得て舞台を大成功させる。
ストーリーのメインはそんな感じですが、監督のセンスの良さが隅々に行き届いた映画で、舞台女優を目指す青春ものとしては、屈指の出来。
薬師丸は、舞台に憧れ成功をつかみ、そして挫折する女の子をみずみずしい感性で演じ切ります。ただ、映画の冒頭の研究生たちのダンスのレッスンのシーンでは、タイツ姿の彼女が何処にいるのかと目を凝らさないように。意外というか、胴長で足の短いのが分からないことを願います。
薬師丸と同様に素晴らしいのが三田佳子。大女優の役を貫禄たっぷりに演じて見事な存在感で圧倒します。現在また、例の息子が覚醒剤使用で捕まり話題の人ですが、この頃は大女優として絶頂期でした。長者番付でもずっとトップで、映画主演が目白押し。コマーシャルも常連でした。何度もの息子の逮捕という不祥事で散々叩かれましたが、三田佳子位のレベルになると芸能界から消えるということはないですが、超一流感というのは薄れました。今はバラエティにも出て、お笑い芸人にいじられるを見ると、痛々しい気がしますね。ご主人には日豪合作の映画の件で、NHKエンタープライズに在籍の頃お会いしたことがありますが、とても感じのいい人でした。
さて、映画一つだけクレームさせて下さい。ラスト近く、舞台の成功で昂揚した薬師丸が、ファンや芸能レポーターたちが待つところへ階段を降りてくるのですが、全ての事情を知った高木が現れ、「許せない、殺してやる」とナイフをかざし薬師丸に向かいます。高木のすぐ後ろに警備員が二人居るんですが、木偶の坊のように突っ立ったまま。目の前で女性がナイフをかざし「殺してやる」と叫べば、すぐ取り押さえるのが普通じゃないですかね。警備員はこのシーンには要らないとおもいました。
80点
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