海と毒薬    九州大学生体解剖事件を扱った実録物 - Kenjis Movie Review
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海と毒薬    九州大学生体解剖事件を扱った実録物

前回に引き続き熊井啓監督の、これも実録物です。原作は遠藤周作の小説「海と毒薬」。太平洋戦争の頃、捕虜になったアメリカ兵たちを生きたまま解剖した医者たちの物語。コロナ禍が理由かどうか分からないですが、ユーチュウブに、古い日本映画のクラシックといえるものが多くあがっており、ありがたいです。
主人公は、若い医師の奥田瑛二と渡辺謙。今でも変わらないと思いますが、院内での権力闘争や腐敗、金持ちにはペコペコし貧乏人には冷淡な体質を舞台に、究極のドラマ、生きたアメリカ兵を生体解剖することへなだれ込んで行きます。奧田は良心の塊、渡辺はシニカルでクールな人間性を代表します。解剖中、奧田は、目を塞いで隅で木偶の坊のように突っ立ってるだけ。渡辺は、淡々と解剖のヘルプをします。小説の解釈を読むと、自身敬虔なクリスチャンだった遠藤は、テーマとして、宗教を持たない人間は、罪の意識が希薄で付和雷同しがちとありましたが、それはそれほど強く出てないと思いました。それよりも、渡辺がモノローグで語っているように、あなたがその状況に置かれたら、イエスかノーかどちらを選ぶのか、言い換えると人間性が試されることが主題だと思いましたが。観客に好感を持たれるのが奧田、反発されるのが渡辺という造りですが、個人的には奧田にはイライラさせられました。強制されたわけではない、選択権があったのに、イヤならノーと言えばいいのにと。100歩譲って、押されるようにオペ室に入ったとしても、何もせずにいるのなら、「僕にはできません」と叫んで飛び出せばいいのにと思いましたよ。煮え切らんやっちゃなと。それと、少し違和感を感じたのは、モノローグ。奧田は九州弁、渡辺は関西弁。渡辺のモノローグは関西弁のイントネーションがあるのに、奧田は全くの標準語。
最後に、関わった者は全員が有罪(死刑を含む)という判決が下りるものの、勃発した朝鮮戦争などのゴタゴタで、全員が放免されたとの説明が。解剖の全資料も手渡すことが条件だったと何かで読みました。岡田眞澄が、日本語も分かるアメリカ側の調査官のような役で出ていますが。なかなか効果的
今では世界のスターになったケン・ワタナベですが、この頃すでにオーラとカリスマは半端じゃないです。ある意味ここでは悪役ですが、実際の主役だと思いました。
                   75点

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