夜汽車 十朱幸代が素晴らしい宮尾登美子作品の映画化 - Kenjis Movie Review
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夜汽車 十朱幸代が素晴らしい宮尾登美子作品の映画化

「なめたらいかんぜよ」の「鬼龍院花子の生涯」が大ヒットして以来、宮尾登美子の小説は映画、TV、舞台化合戦となり、ブームを巻き起こしました。夜汽車もその一つ。もちろん舞台は土佐。おなじ男を愛した姉妹の薄幸な物語です。十朱幸代と秋吉久美子が姉妹で男が萩原健一。これを書いている時に、ショーケンの訃報を知りショックを受けました。GSブームの中、西のタイガーズのジュリーと東のテンプターズのショーケンが火花を散らし、シンガーとしてはジュリーが格段の差で上、ただし俳優としては、ショーケンが比較にならないほど上というのが現実だったのでは。ここでも男の哀愁と色気を漂わせたショーケンはいいですよ。
肺病の妹を養うため、三味線一つで各地を渡り歩く芸者が十朱。長い間留守にしている際、愛する男が妹と出来てしまうんですね。ショーケンはヤクザでいざこざを起こし大きな借金を抱え病床に。秋吉はそのため土地の親分へ身売り。たった一人の身内である妹を助けるため、十朱は金を用意し、身代りなれというなら私がなりますと懇願しますが、親分は聞かず男だったら指一本でもつめてもらうんじゃがと憎々しく言い放つんです。そこで十朱は指をつめるんですが、この場面は、「いよー十朱!」と声をかけたくなる胸のすくシーンです。それから親分に囲われている悪い姉妹が、新藤恵美と白都真理。映画ではよくあるじゃないですか、姉妹といっても、水と油のように違う、え、腹違いの姉妹なのというキャスティングが。この映画では、十朱姉妹と新藤姉妹はうなずける姉妹でした。
妹を取り返したものの、秋吉は結核で死亡。十朱は病院で昏睡状態のままの愛するショーケンに別れを告げ、満州へ旅立ち、そこでショーケンの死を知り、一人果てるという女のドラマです。
一つ惜しいのは、回復したショーケンがリベンジのため、日本刀を持って親分一家を襲うんですが、子分に後ろからナイフで刺され命を落とす場面で、何と刺した筈のナイフがショーケンの右肩の上に顔を表しているんです。映画は完成作品までにラッシュを始め、いろいろな段階で試写があります。誰一人、この単純ミスに気がつかなかったのでしょうか。
林真理子の宮尾登美子評伝によると、宮尾はこの映画気にいらなかったそうです。男のドラマに比重を置き過ぎているという理由で。そうですかね?確かにショーケンや小林稔侍などのヤクザの男たちの部分もありますが、メインは姉妹の物語というはのきっちりと出ていたと思います。
宮尾作品の映画化で、マイベストスリーは「鬼龍院・・」「陽暉楼」とこの夜汽車です。前2作の五社英雄監督もいいですがこの山下耕作監督もいいですね。
十朱幸代は薄幸がよく似合う女優。指つめ場面で見せる一世一代の名演技とともに、この映画を佳作にしました。

80点

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