13 Apr 非行少女 和泉雅子の体当たりの熱演が感動を呼ぶ
名作「キューポラのある街」は、吉永小百合サマが大女優への第一歩となった映画として有名ですが、監督はそれがデビュー作となった浦山桐郎。その成功を追うように、第2弾となったのが「非行少女」。サユリサマに続く日活の期待の若手だった和泉雅子が主人公に抜擢された。確か中学生になったっばかりに見た映画でしたが、初めて、映画は感動という熱いものを運んでくるんだと、一種のカルチュアショックのような気持ちになったことを覚えています。何と言っても、それまでは東映のチャンバラ、日活の裕ちゃん、東宝の若大将と、映画はエンタメだとしか思っていなかったですから。
キューポラは下町の貧しい家庭の少女が、健気にまっすぐに行きていこうという物語でしたが、これはもっと突っ込んだというか、タイトル通り、家庭の不和からグレてしまった少女の話です。
北陸の金沢に近い田舎に住む若江は、母親に病死された後、飲んだくれの父親が女を連れ込み家庭崩壊。グレて学校へも行かず怪しげなバーの手伝いをしたり、危なげな日々を送っています。東京から帰ってきた幼なじみ(浜田光夫)と再会し、彼に励まされ更生しようとするのですが、行き違いや様々な悲劇が重なり、ついには事故ですがニワトリ小屋を全焼させ鑑別所送りに。そこで徐々に自分を取り戻し、自立しようと一人大阪へ働きに行こうとするストーリーです。
映画はオープニングから素晴らしい。タイトルとクレジットは動画で見せるのですが、この数分だけで、黛敏郎の哀切なバックミュージックと共に、グレてしまった少女の孤独が胸に響きます。
映画を見終わって、サユリサマ対和泉の演技合戦は和泉の勝ちと生意気に思いましたが、今振り返ると、レイプ未遂、小屋全焼、施設での少女たちの大ゲンカなど、ドラマチックなシーンが多かったからかもしれないなと思います。
どちらにしても、和泉の体当たりの熱演が大きな感動を呼びます。それから、北極踏破以来、まったく身を構わなくなり、今では小太りの肝っ玉おばちゃんに変貌した和泉ですが、当時は正統派の美少女。映画でも、「おい、べっぴんさんよ」とか、「お前がべっぴんなのは、父ちゃんのおかげだ」とかの、セリフが出てきます。
当時の日活映画は、脇役は劇団「民芸」からの派遣社員ならぬ派遣俳優で固めていたので、周りがしっかりした映画は見応えがありました。金沢のおばちゃん役はこれまた名優の沢村貞子。和泉を手なずけてゆくゆくは風俗で儲けようとするしたたかなおばちゃんですが、やはり上手い。
日活の全盛時代の作品のベスト5に入る映画だと思います。
80点
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