11 Sep 雪之丞変化 市川崑監督による長谷川一夫300本記念映画
雪之丞変化という古典的なリベンジ劇は、若い人にはピンとこないかもしれない。昔人気スターがこぞってやりたがった時代劇で、いろいろなスターによる作品が制作されました(美空ひばり、大川橋蔵、丸山明宏など)。確か、2008年にNHKが、タッキーこと滝沢秀明が主演のものを放映しているので、思い出す人がいるかもしれない。この作品では、雪之丞と義賊の闇太郎の二役を演るのがお約束。
次に長谷川一夫という俳優も、今聞き覚えのある人がどれぐらい居るだろう。大映という映画会社(社長の永田雅一というワンマン大将も有名でした)がまだ息をしていた頃、大御所の大スターでした。長谷川の300本記念(すごい本数です)で、永田社長が、市川監督に「お前、長谷川のためにこれを作れ」と命じられた映画です。
こちらではSBSという政府によるテレビチャンネルがあり、いってみれば多民族国家用のテレビ局。各国のニュースも見ることができ(NHKの7時のニュースも1日遅れで見ることができます)、それに各国の映画もオリジナルが鑑賞できるんですね。大昔、SBSで観たのが最初です。ストーリーは、3人の強欲な商人に破滅させられ、父母を失った雪之丞の復讐物語です。最後のシーン、雪之丞がすすき野原の立つ姿に哀愁を感じて、この手の映画にしては珍しいなと感動しました。
今回もう一度ユーチューブで観たんですが、ラストシーンにそれほど感動しなかったです。あれは弱輩のセンチメンタルだったのでしょうか。映画は面白い。テンポが早く、様式美も要所要所に取り入れて、最後までダレることなく観せてくれます。300本記念ということで、当時の若手トップスターも協演。市川雷蔵、勝新太郎、山本富士子、若尾文子です。雷蔵と勝新は、顔見せだけのチョイ役。勝新って、若い頃は目のパッチリした濃い顔だったんですね。山本と若尾は、長谷川とがっちり絡みます。大奥へ上がっている美女が若尾で、蓮っ葉なスリに山本。これはキャスティングの妙というか、当時日本一の美女が山本、庶民派が若尾と言われていましたが、その逆をいくキャスティングです。若尾は美しく、山本も好演です。
長谷川も雪之丞は、ライティングにとても気を使ったと思いますが綺麗で、闇太郎もいなせな感じで色気があります。300本記念にふさわしい作品だと思いました。
75点
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