14 Dec 陽暉楼 鬼龍院花子の生涯に続く名作
宮尾登美子原作、五社英雄監督の「鬼龍院花子の生涯」が大成功し、続けて同じコンビで作られたのが「陽暉楼」。高知に現存する料亭陽暉楼を舞台にした花柳界の女たちのドラマです。前作の夏目雅子に代わり、主人公は池上季実子、そして浅野温子。池上は料亭の花形芸者。浅野は自ら望んで下級売春婦に。池上の父親で女衒の緒形拳。料亭の女将が倍賞美津子。
とにかく池上が美しい。緒形への反目。浅野との対立。凄まじい2人の大喧嘩があります。五社監督は女と女の対決が好きなんですね。また倍賞と半裸の佳那晃子が、浴場で大げんかをします。残念なことに、倍賞に対していきのいい啖呵をきって向かう佳那は、現在難病を患っているようです。勿論最後には、池上と浅野は和解というか認めあうんですが。
封切り当時、池上はスター誕生と絶賛されたものの、意外にもその後パッとせずに終わっていますが、この映画では複雑で屈折した家庭で育ち、花柳界で生きるしかなかった哀しい女の美しさと演技力が際立っています。
この映画で感動したのは、最後の数分です。池上は肺病で死亡。緒形は敵のヤクザに殺され、駅で待つ浅野は「なんじゃないき」とつぶやきながら、大粒の涙を頬に流し、続いて料亭での芸者たちの踊りのシーンへ。ここでは新米の踊る少女をフォーカス。池上と同じような女のドラマを繰り返すのかと示唆。次のシーンは、観客は、池上の子供はどうなったんだろうと思うのですが、その女の子は、池上が面倒を見てきた盲目の弟の肩車に。弟はあんまとしてきちんとやっていることが感じられ、少女の世話をしていることが見て取れます。つまり、たった数分間に3人の女性の人生行路が明確にされていることです。
こういう映像を見ていると、イマイチの作品もありますが(吉原炎上や肉体の門など)、五社監督は天才だと思いました。
「鬼龍院・・・」に引けを取らない名作です。
85点
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