
29 Nov 長いお別れ 父親の認知症を中心にした家族ドラマ
山崎努が父親で、妻が松原智恵子、娘2人は蒼井優と竹内結子という構成です。山崎の認知症が進み、家族はそれに翻弄されるというストーリーライン。
最初に山崎の遊園地のシーンで始まり、家族とまったく関係のないエピソードがあり、それが後半のシーンにつながり、心にしみるいい画面を提供してくれます。
蒼井と竹内は、既に家を出ていて、竹内は化学者(と思います)の夫と息子と共にアメリカで暮らすという設定。蒼井は、料理関係で自分でビジネスを持とうと奮闘するがサクセスには程遠く、ボーイフレンドにもラッキーではないと女性です。
できた家族というのか、認知症の夫あるいは父親に関して、新聞でよく見かけるような醜いドラマは起きません。ただ唯一、もう家族だけで看るのは不可能かもしれない、施設に入れた方がいいのではという家族会議があるだけですが、この時も、松原の強い反対で、娘たちは施設行きに傾いていたのですが、「私たちはお母さんの決断に従うつもりでいたから」と同意します。山崎はいい家族を持って良かったですね。このシーンの松原が素敵です。おっとりした母親の印象でしかなかった松原が毅然と言い放つ裏に、山崎への愛情があふれていて見せ場です。
ラスト近くのパンチラインは、竹内の息子が受け持つのですが、ここが少し描写不足という気がしました。彼は、帰国の際、お爺ちゃんとの交流があり、お爺ちゃんを漢字マスターと尊敬します(山崎は校長を勤めたほどの教育者で、惚け始めていても、難しい漢字を全て覚えていて周囲をおどろかせます)。息子は学校の校長に「今までの思い出で一番大きなものは」とかなんとか聞かれるんですが、漢字マスターだと答えます。観客はここで彼が学校をやめること知り、えっとなるんですが、そういうシチュエーションならまず校長の一番の質問は学校をやめてこの後どうするのかじゃないでしょうか。見てる方もそれを知りたいと思いましたよ。特に竹内は教育ママ風だったので。他の学校に移るのか、それともおじいちゃんが居た(山崎はこの時点では死去)日本へ帰るのか。ここは一工夫があっても良かったのでは。
監督は「湯を沸かすほどの熱い愛」で各賞を総なめにした中野量太。観てますが、この方がモアベター。これは小森のおばちゃまの名セリフ。敬愛とともにコピー。山崎、松原と共に、蒼井もいいです。
75点
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