
31 Oct 越後つついし親不知 佐久間良子が泥まみれになって熱演
大昔、初めて「越後つついし親不知」というタイトルを聞いた時、一体なんだろうと不思議がったことを覚えています。オヤシラズなので何か歯に関係があるのではと、バカなことを考えていました。当たり前ですが、新潟県にある地名なんですね。
そして大昔、各映画会社が巨匠と呼ばれる監督を何人も抱え、時間をじっくりとかけて作った名作を連発しましたが、その1作、今井正監督による作品で、水上勉の小説の映画化。
佐久間良子が、大女優への第一歩となったと言われているのは水上の「五番町夕霧楼」。試写を見た水上が佐久間の演技に感激の涙をこぼしたというのも有名ですが、これまで美人女優というレッテルでしかなかった佐久間が演技派の階段を上がるきっかけになりました。
2度目の水上の原作の映画化ですが、もっと汚れ役です。文字通り。
山間の農村。働き者の夫婦(小沢昭一と佐久間)。しかし冬場は、半年ほど、京都の伏見の酒造工場に男は出稼ぎに。同じ親不知出身が三国連太郎で、おなじところに出稼ぎに来てます。三国は母親の危篤の知らせで一時田舎へ帰ります。この男は好色なワル。その時、佐久間を犯すんですね。佐久間は妊娠。何度も流産になるよういろいろと試すのですが、だめ。小沢は待望の妊娠で歓喜しますが、結局月日が合わないことに気づき、佐久間を責めます。田んぼの泥の中に佐久間の顔を突っ込み半殺しにしようとします。相手が三国とわかりさらに手を強め、最後には殺めてしまいます。死んだとわかり悔恨と佐久間へ愛で、小沢は、右往左往して、小屋に死体をキープし腐りかかけるまで、抱きしめているんですね。最後には火葬にし、赤紙が来て出兵するため村をあげて行進する三国に体当たりし崖から落下、2人とも溺死してしまうという悲劇です。日常生活のディーテイルがきちんと描かれているので、酒造工場のシーンでは酒のかおりが、村のシーンでは土の匂いがするような気がしました。
三国のワルぶりが出色。息子の佐藤浩市よりずっとイケメンで、たっぱもありワイルドなエネルギーが満ち溢れています。さまざまな女優と浮名を流したことでも有名ですが、さもありなんという感じですね。
佐久間は全編スッピンですが、美しさは隠せない。貧困による遍歴。女中先の息子にやられ、主人にも襲われるのですが、佐久間による、このおしんは、いろいろ悲しいことも多いけれど、済んだことは忘れて淡淡と日々を生きるという女性像がユニーク。レイプであったことを打ち明ける機会も与えられず(最後近くのフラッシュバックで悦ぶカットがあり、あれっと思いましたが)、
殺されてしまうという悲劇を際立たせていたと思います。
共演者に、北林谷栄、殿山泰司、佐藤慶、清川虹子、沢村貞子と超演技派が揃っています。ただ今も生存しているのは佐久間だけですね。
80点
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