
28 Aug わが母の記 樹木希林は菩薩
これは劇場で観たのではなく、樹木希林さんのインタビューが決まり、あわててDVDを購入し観ました。
昭和を代表する文豪井上靖の自伝小説を映画化したもの。実の母親(樹木希林)と疎遠で愛情を感じなかった主人公(役所広司)が紆余曲折を経て、絆を再確認する物語。映画を観てびっくりしたのは、あるシーンで孫の宮崎あおいが「おばあちゃん、入れ歯を落として・・・」というセリフがあるんですが、樹木の顔を見ると、口元は歯を無くしたのが一目瞭然で、(すごい、演技派というのはこういうこともできるんだ)と感嘆しました。インタビューで開口一番そのことを告げると、樹木さんは笑って、「あれは、私の歯はある部分差し歯なんですよ。だからこれはあの場面に使えると、差し歯を外しただけなのよ」と。とんだ恥をかき、二人で大笑いしました。
今では母親役は樹木さん以外には考えられないですが、最初は小さな役だったそうで、主人公は、原田眞人監督のファーストチョイスは、高峰秀子さんだったそう。それが上手くいかず、役が回ってきたとのこと。それからタイトルは「わが母」だったのを、樹木さんが「三益愛子さんの母ものじゃあるまいし」という意見で、「わが母の記」に落ち着いたという。このコメントは60歳以上でないと分からないと思います。昔大映映画が健在だった頃、三益愛子さんという名女優が母ものシリーズでヒットを連発したんですね。こちらも昭和の文豪川口松太郎の奥さんで、川口浩の母親です。
胸に真っ直ぐ入ってくるのは、ラストシーン。認知症が悪くなり,樹木は家を飛び出し徘徊するんですが、それを家族一同が探しまくり、ようやく別所が、明け方の波打ち際で見つけます。樹木を背負い、樹木は安らかな顔して背中で落ち着くんですが、この時の顔は菩薩のようでした。的確な言葉が思いつかないんですが、すべてを超越した菩薩のような顔。樹木さんにこのことを告げると、「あら、そう。あそこは今息子の背中に負われていると気づき、安心したという感じを演じただけなのよ」と、笑っておられました。
別所と宮崎は好演。百恵さんの息子さんですよね。三浦貴大という俳優は。家族の一員で非常にていねいに一生懸命に演じています。そう観客に気付かせるのは、いいことなのか悪いことなのか分かりませんが。
80点
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