映画ジャーナリスト・坂井健二の映画批評ブログ:当ブログは、劇場、TV、DVD、あるいはYOUTUBEなどで観た映画を、新旧ごちゃ混ぜで、洋画一本、邦画一本を取り上げてレビューします。

すばらしき世界 役所広司が素晴らしいしみじみとした佳作

日本映画界で女流監督として双璧をなすのは、この映画の監督西川美和とカンヌにめっぽう強い河瀬直美ではないでしょうか。と言いながら、河瀬監督の作品、まだ未見なんです。不甲斐ない。今年中に必ず見ます。西川監督のは「ディア・ドクター」を見ています。達者な鶴瓶が上手く、いい映画でした。最新作のこの映画は、実在の人間の物語を、直木賞作家の佐木隆三が小説「身分帳」で著したものが原案なので、ある程度実話と言ってもいいのでは。養護施設で幼年期を過ごした後、人生の大半を刑務所で過ごした元ヤクザで元殺人犯の男が、出所後、社会に適合しようと奮闘する中、色々な人間との出会いで、様々なドラマを経て、持病のため人生を終えるというストーリー。善良で一本気な男、ただすぐカッとなるキャラのため、トラブルを起こし、自身を窮地に陥れるんですね。そういう男を役所は100%理解して演じ、見る側の心に真っ直ぐに入ってきます。すごいなと思ったのは、脇の人間、助演者たちに誰1人としてステレオタイプなのが居ないことです。これは、脚本家が人物設定に時間をかけ練っているのと、監督の目が確かだからです。特に、ヤクザの親分の女房役のキムラ緑子が秀逸。ラスト、職場で一緒に働く知能障害の若者、彼は他の職員たちからいじめを受けているのですが、彼から花をもらい、泣きべそをかく別所、そしてアパートに戻り、花束を手にしたまま静かに息を引き取るシーンは、しみじみとした感情が湧いてきます。悲しみというのではない。複雑な背景を持った男の生き様、死に様が心に沁みたと言えるものかも知れない。
          80点

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