09 Jul 赤い影Don’t Look Now冬のベニスを舞台にしたスリラー
名優ドナルド・サザーランドが死去。この人ほど過小評価されていたアクターは居ないと思います。数々の名作に出演していながら、オスカーにノミネートされたことが一度も無いとは!たとえば、ロバート・レッドフォードが初監督し、その年のオスカーを大量にゲットした「普通の人々」。意思疎通がうまくいかない母親(メリー・タイラー・モーア)と息子(ティムシー・ハットン)。その板挟みになる父親役ですが、強弱のハッキリした二人の役より難しい。家庭がぎくしゃくするのをなんとかしようと必死の姿。最後は溢れる息子への愛。感動しました。二人はオスカーにノミネート(ハットンはゲット)。サザーランドだけがノミネートなしというのは合点がいかない。作品が多いサーザランドですが、マイベストスリーは、ジェーン・フォンダ共演の「コールガール」「普通の人々」。そしてこの「赤い影」です。サザーランドに敬意を込めてレビューさせて貰います。娘を事故で亡くした夫婦(サザーランドとジュリー・クリスティ)。仕事のため(教会修復)ベニスに向かいます。娘が溺死した際赤いコートを着ていたのが、一つの伏線。サザーランドもある種の予知能力があり、ベニスで姉妹と知り合うのですが盲目の妹の方が、100パーセント予知能力者。一人英国に残してきた息子が病気になり、クリスティが帰国中サザーランドは、クリスティと姉妹が小舟で運河を行くのを見るんです。これは最後の葬式につながるシーン。彼は自身の葬儀を見た訳ですね。赤いコートを着た少女が逃げるのを見て、彼は追いかけます。娘をオーバーラップしたのでしょう。ついに追い詰め、「怖がらないで、友達だよ」と言い、それまで背を見せ泣いてた少女が振り返った時のショック。サザーランドはナイフで刺殺されラストシーンへ。個人的には一番好きなシーンです。ピノ・ドナッジョの壮大なシーンに合わせて葬儀の小舟が2艘姿を表します。最初のは豪華に飾られたサザーランドの遺体が乗ったもの。次はクリスティと息子と姉妹の乗ったもの。朝靄の中を教会へ向かうシーンは、心を揺さぶるシーン。カットバックを流れるように使った監督ニコラス・ローグの秀作。
80点
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