10 Jun 関心領域The Zone of Interst監督の強い思い入れと自己満足
ある高名な批評家が、これまで見たホロコーストもので一番怖かった映画と言っていましたが、ふんふん時流に乗った批評だなと思いました。今年のオスカーで最優秀外国映画賞を取った話題作です。アウシュビッツ強制収容所を取り仕切る将校とその家族のドラマで、大きな特色は、収容所内のユダヤ人を一切見せないで、ホロコーストの恐ろしさを訴えようとしたもの。とても難しいプロジェクト。それを可能にするには、ハイレベルの脚本とハイレベルの才能を持った監督が不可欠。映画は、壁一つを隔て、向こうが収容所で、こちらが所長の家というスタイル。10年ぐらい前に、意を決してアウシュビッツ見学に行きましたが、こういう構図は実際には不可能。でもそれはいいんですよ。監督の意図を訴えるため物理的なものを色々変えたとしても。向こうに見える煙突から黒い煙が上がっているのは、ガス室で殺されたユダ人の死体を焼く煙でしょう。一方、こちらの庭には、美しい花が咲き乱れ、子供たちはプールで歓声をあげ女性たちはお茶を楽しむ。地獄と天国の徹底的な比較。監督は音楽で収容所の地獄を表現したとコメントしていましたが。ただ1シーンは至難の業を可能にしたと思いました。それは所長の妻(サンドラ・ヒュラー落下の解剖学でオスカーにノミネートの演技派)に届けられた豪華な毛皮。収容所に強制送還されたユダヤの富豪夫人のものでしょう。それを着て、鏡の前であれこれポーズをしている最中にポケットにダイアモンドがあることに気づき、それをポンとテーブルの上に投げた時です。戦慄に似たものが身体を走りました。
70点
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