02 Feb 終わった人 すべてが中途半端で辻褄が合わない
内館牧子のベストセラー小説の映画化だそうです。オープニング、定年を迎えた舘ひろしが、最後の日机上の時計を見ながら、チクタクと針を刻むのが5時を指すのを待ってるのシーンは、ジャック・ニコルソンの映画『アバウト・シュミット」からのパクリですね。この映画も仕事を終えた男が、旅に出て色々な人と遭遇し悲喜交々のドラマが展開し、最後にホロっとさせる佳作でしたが、比較するのが酷というか、レベルが全然違います。
一流企業で出世コースから外れたものの、無事勤め上げた舘が、その後の人生をどうするかを試行錯誤するドラマ。娘は結婚して家を出ており、自立精神の旺盛な美人妻黒木瞳との二人だけの家庭。
舘は、シニアクラブで知り合ったIT企業の社長(まだ若い)に出会ったことで、第2の仕事の道が開けるんですね。その会社のシニアアドバイサーとして腕を発揮しますが、社長が心臓麻痺かなんかで急死。社長のパートナーのデブ男に懇願され、社長業を引き受けるのですが、海外の融資した会社が潰れ、ともに自滅。社長だったため、会社の負債も払い、それでもまだ9千万円の借金が残り、黒木にも愛想を尽かされ、別居。故郷へ帰りNGOの事務所を手伝うことになる、そんなストーリーです。
まずそれはないでしょと思ったのは、会社の負債を全て負うことですね。小さいながら会社経営の経験がある身からいえば、と言うことは舘は会社の100%オーナーになったと言うことですね。例えば、会社は急死した者が51%、デブ男が49%のシェアで起こしたものとします。急死した後、その男のシェアは必然的に、彼の妻へ行くはずです。特別の取り決めがない限り。舘が全てオーナーシップを買い占めたとは思えない。そんなお金はどこから出るの?デブ男に頼まれた時、雇われ社長で良かったのではないのですか。トップにはなれなかったとしても、一流企業で長年勤めた男が、こう言う会社のプロセスをあるいは責任の重さに無知だったとは思えない。そういう背景を知っていなががオーナー社長になったというのなら、この男は馬鹿。ま、舘に大きな借金を負わす為の流れですが、背景が中途半端の説明しかないというかメチャクチャ。それと、会社が終わる時のシーンは、とても後味が悪い。スタッフに生意気な兄ちゃんと姉ちゃんが居て、兄ちゃんは、「前の社長だったら、こんなことにならなかったのに」と非難し、姉ちゃんは「会社は潰れるのに、奥さんは1千万をかけてお店(美容室)を開くなんて」と文句を言うんですね。ホラ、横に居る、泣いて社長業を頼んだデブ男、何か言わんかいと思いましたよ。舘が引き受けてくれなければ、お前らはとっくに仕事を失くしていたとか、黒木妻は、自分でコツコツ貯めたお金。オメエがガタガタ言う筋合いのもんじゃないとか。実際ここは、真逆の心暖まるシーンの方が良かったのでは。
文化人のおばさんたちは出たがり
同郷の女性、広末涼子との絡みも中途半端。何か起きるのかなと思っていたら消滅。意外な再会を経て、最後は田舎へ帰る舘を身送るために東京駅へ駆けつける。涼子ちゃん、アンタ何が望みなの。故郷の家の母親と姉(ですよね)の扱いも中途半端。
こんな歳で妻と別れて帰ってきたおっさんに何も言わず、いつでもここへ帰って来ればいんだよと二人ではしゃいでいるのも不思議な光景。普通だったら、何が原因なのとか、これからどうするのとかの家族の心配があるんじゃないですか。最後がまた中途半端の極め付き、黒木妻が家にまでやってきたので、そうかまた二人でやり直そうと言うのかなと思ったらそうではなく、これから2か月に1度、白髪染め(舘が現役時代そうしていた)に来てあげると言うんですね。思わせぶりなことはすんなよ。それとも永久に別居なの?それに、舘は、NGO勤めで、髪なんか染める必要ないでしょ。あ、それから今思い出したのですが、まだ9,000万円残ってる支払いはどうするの?NGO勤めじゃ不可能だよ。とにかく中途半端で辻褄の合わない映画です。利点は舘ひろし。これまでニヒルな都会派のアクションスターだと思っていたんですが、シリアスもコメディもこなせる実力派だったんですね。それとこの年で、これだけジーンズとサングラスが似合うおっさんは居ない。
映画「新聞記者」の望月女史もそうでしたが、この映画でも内館女史がシニアセンターへ来るおばさんとして出演しています。1シーンはなんと顔だけのクローズアップ。すんごい美女で目の保養になるのならまだしも、こういう文化人のおばさんって、出たがりなんですかね。監督が希望したことだとは思いますが。内館女史の本職は脚本家でしたよね。映画に出る時間があるのなら脚本のアドバイザーをすれば良かったのに。監督はホラー「リング」で世界的名声を得た田中英夫。
60点
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