16 Apr 楢山節考カンヌの最高賞を取った今村昌平監督作品
木下恵介作品と比べて、非常にリアルというか、とても生々しい楢山節考です。70歳になった老人たちは、姨捨山に捨てるという因習がある村に住む人間模様。監督はじっくり時間をかけ、四季の移ろいの中で、生と死のストーリーを綴ります。特にフォーカスしているのは性の営み。人間だけではなく、自然界の動物や植物のそれもとらえているんですね。田中絹代と高橋貞二が親子だった前作。ここでは坂本スミ子と緒形拳が親子です。おスミさんのおりん婆さんは、まだまだいけますという印象が強いです。セクシーでフェロモンだって出てますよ。平たくいうと、若々しくて姨捨山行きってマジかよと思っちゃうんですね。腰を曲げての婆さん演技に懸命ですが。もちろん、おスミさん、緒方を初めとして、倍賞美津子、あき竹城、清川虹子、常田富士男など全員が熱演。それとラストの姨捨山への親子の道行きは長く、山や峠をこえてデイテールに撮られているので、見ていて、苦行というのが実感できます。個人的には、姨捨がメインというよりも、森羅万象の営みを(死を含めて)カバーした、スケールの大きさを感じます。おスミさんは、監督のリクエストにこたえて、2本の前歯を抜いたそうですが、それは必要だったのかと思ったりします。監督のエゴではないかと。木下版、今村版、どちらも秀作ですが、好みとしては、残酷で哀しい民話を、一つのポエジーとして画面に刻みつけた木下版です。
80点
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