10 Jul お吟さま 大女優田中絹代が監督した作品
日本映画史に大きな足跡を残した大女優田中絹代は、監督の分野でも活躍しました。監督が性に合ったのか、監督作品は数本あります。現在、女性の監督は珍しくないですが、当時としては画期的なことだったのでは。もう一人大女優で監督もしたのは左幸子です。田中は個人的には、リアルタイムでは晩年しか知らないのですが(「サンダカン八番娼館」や「三婆」など)。サイレント映画からの主演女優というのは知っています。原作は毒舌和尚として名を馳せた今東光が直木賞をとった小説。豊臣秀吉の時代、キリシタン大名である高山右近(仲代達矢)への一途な愛に殉じた、千利休(中村鴈治郎)の養女お吟さま(有馬稲子)の物語。見終わって、お吟さまの命さえ投げ出した愛へのいとおしさが全然伝わってこないんですね。意外にも。岸惠子が台詞なしワンシーンに登場。禁じられた愛を犯し、磔になる女で馬に乗せられ刑場へ行くという鍵となる場面、それを見たお吟さまが、愛を貫いた女の晴れ晴れとした表情と呟きますが(このセリフはラストシーンでも繰りかえされます)、岸のクローズアップは全然晴れやかとは思えなかったです。女性の監督らしい細かいところにも手の届く監督ぶりは顕著。特に優れていると思ったのは、さすが女優、女優を美しく撮るアングルを知り尽くしていることです。有馬の正面、横顔、右斜め上から、左斜め下からと、外れは一つもなく、有馬はとても美しいです。ただ一番重要なドラマのテーマが、見る側の心に届かない。何故だろう。有馬の演技は、冷たい演技という印象を持ちました。もう少し喜怒哀楽をドラマチックに演じても良かったのでは。でも、それも最終的には監督の采配なんですよね。
60点
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