24 Dec 赤線地帯巨匠溝口監督の遺作
若い人には赤線というのが何か分からないと思う。簡単に言えば風俗。昔は、公認の売春の場所があったんですね。だいたいオーナーとやり手の女将が、5〜6人の売春婦を抱えて商売をやってる訳です。そういうエリアを赤線地帯と呼んでいたんですね。1956年に売春防止法が制定されていますが、その前後のドラマ。売春婦には、京マチ子、若尾文子、三益愛子、木暮実千代などが扮しています。面白いのは、ジメジメしていなくて、貧困のために売春をしなければならない悲しい女の人生をではなく、あっけらかんとして、皆バイタリティ旺盛な描き方です。ちよっとオツムは悪そうだけれど、ノーテンキな京マチ子、父親のビジネス失敗のため割り切って男たちからお金を巻き上げる若尾文子、こんなおばはん買う男が居るんかなと思わせる大年増の三益愛子、線の細い夫を叱咤激励する木暮実千代。それぞれから春をひさぐ女(古い表現!)の哀感なんぞ、これっぽっちも感じさせないです。面白いと思ったのは、若尾と三益。若尾は、しっかりお金を貯めて、赤線地帯から出ると倒産していた布団屋を買い、かって働いていた場所でも顧客を作り、ビジネスを成功させるというしたたかさ。母もの映画で有名な三益は、息子に自身の商売を知られ、発狂。でも悲劇というよりも、監督、パロディとは言いませんが、母ものラインを投影させてるんだと思いました。溝口監督は、民話を格調高い芸術作品に仕上げた「雨月物語」や「山椒大夫」などで、海外でも賞を取り、国際的にも有名な監督ですが、その時代の様子を現代群像ドラマにしても、巨匠として揺るぎは一切ないです。
80点
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