30 Jun 約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯
1961年に、三重県の名張市で起きた毒ぶどう酒事件(5人が死亡)の犯人として逮捕された奥西勝氏。死刑判決が確定したが、冤罪を訴えて生前9度にわたる再審請求を起こした。死刑確定から43年間死刑執行が見送られた一方で、再審請求が認められず、2015年獄死した。
その事件を、仲代達矢(奥西勝)、樹木希林(母親)などで映画化したもの。動機は、寄り合いの宴会で、妻と愛人(ふたりとも死亡)との三角関係を清算するためで、そう自白したことが決め手となった。奥西氏は、自白は強要されたもので冤罪であることを主張。気の遠くなるような長い長い再審請求の戦いが描かれている。
母親が刑務所に面会に行った場面で、なぜ息子とのツーショットがないんだろうとか、構成は全体のナレーションは寺島しのぶで、それにくわえて仲代のモノローグがかなりあり、ここのところもっとシンプルに整理できなかったのだろうかなどの思いは、この映画の重さの前では、ぶっとんでしまいます。
映画はドキュメンタリー風で、実際のニュースを織り込んで、実際の弁護士や裁判官が出てきます。氏は背の高い美男子で、不倫か、そうだろうなと不謹慎な思いも、ちらりとかすめます。でも、不倫と殺人は全く違う。映画の中で、心に残ったのは、元裁判官が、今にも泣き崩れそうになるのをこらえて、裁判官を信じて何度も何度も再審請求をしてくるんですと言うシーンと、唯一再審を認め、翌日には辞職した裁判官の写真でした。さまざまな意味が含まれており、万感の思いがしました。
冤罪はどの国ででも起きている。勿論オーストラリアでも。勿論という言い方は不適切かもしれませんが。
こういう映画を観ると、つくづく思います。人が人を裁くことの怖さと難しさ。子供じみた愚考ですが、いつかコンピューターによる裁判官のロボットは誕生しないのだろうかと。そのロボットに、検察側の言い分を入れ、そして弁護側の言い分を入れ、判決を仰ぐというシステムは不可能なんだろうかと。
80点
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