06 Aug コールガール klute ジェーン・フォンダのベストムービー
大昔、雑誌「スクリーン」で、まず淀川サヨナラ先生や、小森のおばちゃまなど錚々たるレギュラーの執筆者の方たちによる、リレー式で私が影響を受けた映画というテーマで連載が始まりました。それが終わると、次は海外通信員によって。
シドニー通信員として番が来た時、取り上げたのがこの「コールガール」と、「アラビアのローレンス」でした。「コール//」は、大都会の一筋縄ではいかない人間模様の哀愁に、「アラビア//」は、砂漠のシーンなど圧倒的な映画のスケールに魅了された事を理由に。
フォンダが演じたのはブリーというニューヨークのコールガール。本当は女優志願ですが、それでは生活出来ないので、商売をしている訳ですね。良心の呵責もあるのか、レギュラーに精神分析医を訪ね心の分析をする異色のコールガールです。南部のビジネスマンが仕事でニューヨークへ行って消息不明となり、それを調査するため友人のクルートKulute(ドナルド・サザーランド)がニュヨークに赴き、友人が買ったかも知れないコールガールということで、フォンダと関わることになります。フォンダは、男に見覚えがなく、結局、クルートの売春婦探しを手伝うことに。サスペンスですが、犯人当ては大して重要ではなく(中盤ぐらいに犯人は割れてしまいます)、大都会の裏社会の住民の横顔がリアルに切り取られています。
素晴らしいのが、ジェーン・フォンダ。ニューヨークに住む女優志願のコールガールという野心と孤独がないまぜになった女性像を、完璧に表現していました。
圧巻は、犯人(この男は録音狂なんですね)に捕まり、録音された自身の声や、知り合いの売春婦が彼に殺害された時の模様を、黙って聞くシーン。かなり長丁場のこのシーン。ファンダは涙を流し、そして鼻水を流し、それが長く糸を引くんですね。ブリーの内面を全てさらけ出したような、心に突き刺さる場面です。
それから蛇足ですが、映画の初め、フォンダが客とのベッドシーンで、大げさに喘ぎ声をあげ演技しながら、腕時計を見て何分経ったかをチェックするのに笑っちゃいましたが、蜷川実花の「ヘルタースケルター」で、沢尻エリカが同じことをやっていました。この映画からのパクリだと思います。
フォンダは、これでオスカーを初受賞。文句なしの受賞だった思います。
それまで、スターで映画を観に行ったことはなかったのですが、この映画以降、フォンダの映画は、「私が愛したグリンゴ」がつまらないと思ったまでは、すべての作品を追っかけました。
90点
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